坂道では自転車を降りて
「神井。落ち着け。」
気付いた時には、俺は飯塚に羽交い締めにされ、沼田に胸を押されていた。見ると昇降口には人だかりが出来て、今西が鼻血を出してひっくり返っていた。
「はやくそいつをどっか連れて行け。」
沼田が今西の連れと思われる2年に指示している。
「逃げるなよ。殴らせろ。多恵に何をっ。」
そこまで言ったところで、沼田のげんこつが俺の頬にめり込んだ。
「神井っ!黙れ。」
手加減したのだろう。大して痛くなかったけど、喋っていたから口の中が切れて血の味がした。分かったから、せめてあいつを殴らせろ。暴れる俺を飯塚は簡単に組み伏せた。悔しさに歯嚙みしていると、誰が呼んだのか教師が現れた。野次馬はいなくなり、俺達はそのまま校長室へ連れて行かれた。
校長室では一通りの説教を食らったが、沼田が上手いこと言い訳してくれた。俺と沼田のケンカということになった。俺は頭に血が上っていて今西の事を口走りそうになったけれど、後から冷静に考えたら沼田の判断が正しかったと思う。今西の名前が出たら、多恵のことまで話が及ぶ。飯塚は事情を何も知らないのに、黙って沼田に口裏を合わせてくれた。案外機転の利くヤツだったんだ。
解放されて帰途につくとき、沼田に聞かれた。
「そういえば、大野さんと連絡とれた?」
「。。。サボってるみたいなんだ。家じゃなくて、どこかの駅にいるみたいだった。」
「会いに行かなくていいのか?」
「俺に会いたくないみたいだ。」
「そうか。大丈夫かな。」