坂道では自転車を降りて
多恵はもう家に戻っただろうか。今日は一日、何所にいたんだろう。どうして、会うと言ったり、会えないと言ったりするんだろう。分からない。何も分からない。
「さっきの大野さんなの?」
飯塚が口を挟んだ。
「。。。。」
「沼田、大野さんが学校をサボってるって本当?」
「サボリかどうかは知らない。学校には来てない。」
「大野さんて、そんなことするの?」
制服を着た彼女が、暗い顔で昼の繁華街をウロウロしている様子が浮かんだ。世間知らずの彼女がそんなことをしたら、危ないなんてもんじゃないだろう。よく一日無事でいたもんだ。それとも何かあったのか。だから急に会えないと言ったのか?メールを書いたのは、電話に出たのは本当に彼女だったのか?急に心配になり、彼女に電話をかけてみたけど、彼女は電話に出なかった。
「俺がかけてみる。」
飯塚が電話をかけると電話は繋がった。飯塚は普通に談笑し始めた。楽しそうに弾む会話。俺は、聞いていられなくてその場を離れた。沼田が所在なげに俺についてきた。
「今西とはもう関わるな。噂がたったら一番傷つくのは彼女だ。」
「ごめん。そうだよな。ありがとう。本当に。」
「いや。」
「俺、さっきお前の事、蹴ったよな?」
「うん。」
沼田は自分の胸にまだ残っていた俺の足跡をもう一度払った。
「ごめん。」
「いいよ。俺もお前を殴ったし。」
「本当に、ありがとう。」