坂道では自転車を降りて
俺は彼女の家に寄ろうか迷って、結局寄らなかった。飯塚と話してホッとしてしまったせいか、なんだか気力が湧かなかった。疲れてしまったのもある。これ以上彼女を追い詰めたくないとも思った。
夜、もう一度だけ、彼女に電話した。相変わらず、出てはくれなかった。しばらくするとメールが来た。
『約束を守れなくてごめんなさい。心配もかけたみたいだね。それもごめん。今はあなたと話せる自信がないけれど、明日はちゃんと学校へ行きます。私は大丈夫です。あなたは大丈夫ですか?駄々をこねていると飯塚くんに聞きました。』
『駄々なんかこねてないよ。すぐでなくてもいいから、君と会って話がしたいです。どうして急に会えなくなったの?どうして逃げたの?分からない事だらけです。』
返事はすぐには来なかった。もう会えないんだろうか。諦めかけた頃、着信を知らせる音が鳴った。
『ごめんね。今日はもう寝ます。また明日。』
あれだけ待たせてこれだけか。少しがっかりしたけれど、多分、悩んで、いろいろ書いては消したんだろうと思い返して返事を書いた。
『わかりました。よく寝てください。また明日。おやすみ。』
『ありがとう。おやすみ。』
こんなに優しく思いやりながらメールできるのに。どうして会えないんだろう。いや、きっと大丈夫だ。焦らなければ、すぐに会える。また明日と彼女は言った。明日会えると言う意味ではないだろうけど、望みはまだあるということだ。飯塚の言うように、ただの痴話げんかなんだ。きっと。