坂道では自転車を降りて
「じゃあ、早速やりますか。どうするの?」二人の声が倉庫から聞こえる。
「あのね、これをどけて、鏡を出したいの。だから、これをまずこのへんに避けて、で、鏡は、、、」
資材の移動に川村を呼んだのか。川村は音響を担当している裏方組の1年だ。大道具は正式には大野さんと2年の先輩の二人。他に照明と音響の先輩を含めても裏方組は全部で5人しかいない。今度の公演で先輩達3人が引退すると、大野さんと川村の2人で裏を仕切ることになる。女子が舞台監督じゃいけない理由はないが、人数や力仕事のことを考えると、新人が入部し部に慣れるまでは大道具の作業も川村の協力がなければ立ち行かない。照明はどうするんだろう。
「了解。どいて、おれ一人でもできそう。」
「無理無理。二人でやった方がいいよ。結構重たいよ。さらに割れても困るし。」
「そうか、、了解。そっちでいい?」
「川村くん、軍手しないと危ないよ。これ使って。」
「おう、サンキュー。。」
狭い資材倉庫で声を掛け合いながら、二人が作業をする音が聞こえてくる。大道具の配置を換えて鏡を運んでいるらしい。今まで前室に掛けてあった大鏡だが、前回の公演で使った際に割れてヒビが入ったため、今は倉庫にしまってあった。出してどうするんだろう。修すのかな?
「やっぱ重いな。でも鈴木先輩これ一人で出してたよな。」
「あの人は規格が違うから。笑」
聞き耳を立てている自分に気づいた。だめだ、脚本に集中しなくては。