坂道では自転車を降りて

 さて、ここからが問題だ。自室に呼んだはいいけど、なかなか思い通りには触ったり眺めたりさせてくれない彼女。潤んだ瞳を見ていたら、攻撃的な気分になってしまった俺。やばいぞこれは。彼女の背後にあるベッドが目に入る。布団は干してあるから今はただの台だ。2段ベッドを分解して使っている俺のベッドは周囲に柵がある。ここに縛り付けたらどんな顔するだろう。セックスはしない。だけど、真面目なくせに不謹慎で、晩生なのに大胆で、臆病なくせに意地っ張りで、俺を困らせてばかりの生意気なこの彼女に、思う存分触れて、可愛がって、感じてる顔や恥ずかしがって困る顔を眺めたり、ちょっとだけ意地悪して、泣き顔を眺めたりしてはいけないだろうか?

 おあつらえ向きに、ベッドのふちにはタオルがかけてあった。夜寝る時に保冷剤に巻き付けてたヤツだ。これで、やっちゃう?恍惚とした表情で漏らす吐息も、切なげに喘ぐ顔も、可愛くて大好きだけど、今日はこの晩生な優等生を泣くまで弄り倒して、困らせてやりたい。

 俺は、あきらめたふりをして肩を落とした。彼女はホッとした表情で笑い、力を抜いた。
「だったら、あと1回だけ。ギュッてしていい?」
お願いしたら、
「1回だけだよ。」
にっこり頷いて身体を寄せてくれた。
 彼女の頭を優しく抱き寄せてギュッと抱き締める。温かくて柔らかい。彼女と手を繋ぎ、指先にそっと口づける。彼女が恥ずかしそうに目を閉じたとき、その手を素早くベッドの柵に縛り付けた。
「何?ちょっと、嘘。やだ。」
 こんな現場を母さんに見られたら、二度と彼女を呼べなくなる。分かっているから、彼女も小声だ。

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