坂道では自転車を降りて
「やっぱりまずいかな?」
右手をベッドにしっかりと縛り付けると、俺の頭や背中をポカポカ叩いていた左手を掴まえて、握りしめた。彼女の身体がぶるっと震える。指先を優しく愛撫しながら、その手を縛るものを探す。確かタンスに球技大会で使ったハチマキがある筈だ。でも、このままじゃちょっと届かない。仕方ないので、一旦、彼女の手を離してタンスの引き出しを開けた。手を離すと彼女はハッと気付いて、縛られている右手をほどき始めた。でも、幸か不幸か、右手のタオルがほどける前に俺は再び彼女の左手をとらえた。
「あっ。」
「へへ。俺の勝ち。」
怒った表情をみせる彼女に意地悪く笑いかけながら、左手もベッドの柵に縛り付けた。彼女がマジで焦って、不安そうな顔になった。この表情。ゾクゾクする。緩んだ右手ももう一度縛り直す。彼女は驚きと恐怖で声が出ない。
「怖い?」
彼女は答えない。血の気の引いた顔で俺を見ている。
「ごめん。ひどい事するつもりはないんだ。だた、ちょっと好奇心というか、やってみたくて。だって君、素直にさわらせてくれないから。」
あわてて言い訳してみるけど、彼女は口を開けたまま唖然としている。やっぱそうだよなぁ。びっくりするよなぁ。でもここで止めても止めなくても、多分、結果は同じだろう。
「俺、多恵が好き。すっげー好き。だから、本当に我慢できなかったら言って。すぐほどいてあげから。」
「何、するの?」
怯えて震える声も、本当に愛おしい。
「何がしたいのか、自分でもよくわからないんだ。どうして欲しい?」
「ほどいて欲しい。」
「それは、後でね。キスしてもいい?」
彼女は不信感いっぱいの目で、それでもゆっくりと頷いた。正面に座って腰に手を回し、少しずつ顔を近づけると、耐えきれなくなったのか彼女が逃げるように横を向いた。構わず頭に口づけた。
「なんで?まだ、何もしてないじゃん。」