坂道では自転車を降りて

「怒ってたのか、あきれたのか、よく分からないけど。結局、いつまで待ってもあなたは抱き締めてくれなかった。」
「それは。。。」
「そしたら、会うのが怖くなってしまって。あなたがため息をついただけで、胸がつぶれそうで、。」
「わからないよ。なんで?たった一度叱られたくらいで。」

「ごめんなさい。自分が、訳の分からない理屈で駄々を捏ねてるのも分かってる。君が困ってる事もわかってた。素直に、、素直にごめんなさいって。あなたが好きって、抱き締めてって言えば、君が許してくれる事も、抱き締めてくれることも、本当は分かってたの。でも、会うのが怖くて、、また逃げた。だから、もういいの。」

 彼女はまた泣き始めた。多分、叱られたせいだけじゃない。彼女はきっと全部分かってるんだ。自分がこの恋に振り回されて、おかしくなってる事も、俺がそれに戸惑っている事も。自分自身がこのままではダメだということも。そして、立ち上がろうと焦って、俺から離れようとしてるんだ。

 ごめんなさい。彼女は何度も謝った。彼女の心がもういっぱいいっぱいで限界なんだということが、俺にも分かった。叱られたのはきっかけだ。夜中に俺に会いに来るより前から、きっと、学校をサボって海へ行った頃から、もう彼女は限界だったんだ。

「もういいなんて、言わないでよ。俺は毎日だって会いたいのに。今だって君を抱き締めて、君にキスして、君に触りたくて仕方ないのに。なんで、そんな悲しい事言うの?」
「もういいの。そんな嘘。要らない。」
「嘘じゃないだろ。分からないのか?」
「でも、抱き締めてくれなかった。」
「今、抱き締めてるだろ。」

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