坂道では自転車を降りて
彼女は頷いてから、また首を振って、俺の腕の中から逃げようと俺の胸を押し、またその手で、今度は俺のシャツを掴んで頭をぐりぐり押し付けた。激しい嗚咽が漏れた。
「私、どうしたらいいかわからない。」
そんなの俺にだって分からない。『もう放してあげてよ。』北村さんの言葉が脳裏をよぎる。このまま、別れてしまった方が彼女は楽なのかもしれない。
でも、俺にもそういう時期はあったし、今だってそう大差ない。彼女の気持ちよりも自分の気持ちが大事なんだと開き直ってしまっただけだ。彼女の気持ちが俺にあるという、何の根拠のない自信を得て、以前よりほんの少し楽観的にしているだけだ。もうすぐ会えると勝手に決めて、約束できなかった日はイライラして眠れなかった。君と会うのをやめようと思った時もある。でも、今日だって、ほんの些細な口実を得たら、一日だって待てずに学校へ来た。彼女と別れるなんて。できる訳がない。彼女だってきっとそうだ。
「君は何もしなくていいんだ。今まで通り、会いたくなったら呼んでくれたら、いつでも、俺が会いに行く。必ず行く。夜中でもいい。君が呼んでくれさえしたら、俺は必ず行く。それ以外の時間には自分のしたいことを、勉強したり友達と遊んだりすればいいんだ。何も変わらないだろ?」
彼女の頭を撫でながら言い聞かせる。
「そんなの無理だよ。」
「なんで?」
「だって、毎日会いたいんだもの。一日中一緒にいたいんだもの。なのに、会うのが怖いんだもの。一緒に要るとどうしていいかわからなくて、不安で怖くて逃げたくなるんだもの。」
一気に言うと、俺の腕の中からするりと出て行ってしまった。
「君が、怖いの。」
細い肩をますます縮めて、俯いて両手で顔を覆った。