坂道では自転車を降りて

彼女が何か言いたそうな顔をしている。彼女のして欲しい事はなんとなく分かったけど、あえて聞く事にした。
「言いたい事あるだろ。」「ん。」
「言ってみな。」「うーん。」
「素直に言わないから、拗れるんだろ。」

彼女は目を伏せて、紅い顔でモジモジしてたけど、小さな声を絞り出した。
「ごほうび、くれる?」
可愛くて面白いから、からかいたくなる。
「何?聞こえないよ。」
ニヤニヤ笑って答えると
「やっぱりいい。」
彼女は目を逸らした。うわ。もう諦めるのかよ。
「まてまてまて」
言ってる間に彼女は帰り支度を整え始めた。もう目に涙が溜まってる。この顔はすごく可愛いんだけど、そんなこと言ってる場合じゃない。打たれ弱すぎるだろ。

「もう一回だけ。言ってみて。お願い。」
「でも。」
あー。本気で泣いちゃってる。なんでこのくらいで。
「多恵。どうしちゃったんだよ。」
情緒不安定って、こういうのを言うのか。俺はまた彼女を抱き締める羽目になった。
「俺の事好きって、言ってごらん。」
「神井くんが、好き。」
「キスして下さいって、言える?」
彼女は首を振った。なんでだよ。
「キスして欲しい?」
「うん。」
ポロポロ泣きながら頷く。
「だったら、なんでちゃんと言わないの?」
「わかんない。でも、私、ちゃんと言った。神井くんが聞こえないふりした。いじわるした。」
確かにそうだ。俺がいじわるしたんだけど。
「。。。。。そうだけど。」

< 741 / 874 >

この作品をシェア

pagetop