坂道では自転車を降りて
「今、何時かな。」
「7時過ぎてるかなぁ。そろそろ帰らないと。」
「だよなぁ。」「うん。」
「帰したくないなぁ。」
俺が言うと、彼女は少し間を置いて、
「私も帰りたくない。」と言った。
「ダメだよ。君までそんなこと言っちゃ。」
「だって、帰りたくないんだもん。」
「だったら、泊まってくか?」
今日は母さんは帰ってこない。
「神井くん、ズルい。私がそんなことできないの分かってて言う。」
「だって、帰したくないんだもん。」
「私。。」
彼女はそう言うと黙り込んでしまった。声が湿っている。俺は驚いて彼女を見た。泣くような事じゃあないだろ?明日も明後日も会えるんだぞ。
「もう。帰る。」そういって立ち上がった。
「ん。あぁ。」
「また。来るね。来ても良いでしょ?」俺に背を向けて言う。
「もちろんだけど。多恵、どうした?大丈夫?」
「。。。。」
彼女は振り返り、潤んだ瞳で俺を見た。何か言おうとして言いあぐねている。しばらく2人で睨み合った。
「なんでもない。帰る。」
「分かった。送るよ。」
「うん。お願い。」