坂道では自転車を降りて

 2人でコンビニに寄った。ガムとお茶を選んで彼女の方を見ると、菓子の商品棚をみていた彼女が「あ。」と何かに気付いた。
「何?どうした?」
「わかった。スルメだ。」
大発見のような言い方。何がスルメ?
「何かの臭いに似てると思ったんだよね。」
子供みたいな無邪気な笑顔で俺に報告するが、まさかそれって、さっき彼女の手に俺がつけちゃったあれの話なんじゃ。まさかじゃなくて、そうだな。多分。
「なんか、ずっと気になってて。」
分かった。分かったけど、なんで、ここでそれを俺に報告する。 
「ガ・ガムはこれで良いか?お茶はほうじ茶で良いんだよな?」
焦って不機嫌になった俺の顔をみて、彼女はペロリと舌を出した。

コンビニの前で2人でお茶を飲み、ガムを噛み、明日の予定を確認して、再び自転車に乗った。程なく彼女の家の前についた。
「また明日、おいで。」「うん。」
「なんかあるならちゃんと言えよ。」「そうだね。」
「大丈夫か?」「うん。」
彼女は自転車から降りると「じゃあね。」と言いながら、後ろをむいて門の前迄行くと、また戻って来た。
「どうした?」
「なんでもない。かみいくんがすき。」
一度俺の胸に触れて、にっこり笑うと、くるりと後ろをむいて家に走って入った。

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