坂道では自転車を降りて

「生駒さん、今は部に顔出して無いけど、何か考えてることがあるみたい。部は辞めないって。」
「そうなんだ。山田とはなんとかなったの?」
「どうだろう?聞かなかった。高橋君の話をしたよ。」
「高橋?って音響の?」
「うん。なんか、次の脚本の相談にのってもらったりしてるって。高橋君、あーゆーのほっとけないんだよね。生駒さんはすごく感謝してるみたい。」
 あの妙な盛り上がり方は、高橋の話をしてたのか。。俺のことは話してないんだな。よかった。彼女に気付かれないように、ホッと息を吐いた。

「丸く収まるといいんだけど。」
「まあ、収まっても収まらなくても、経験だな。それぞれ。」
「神井くん、また、偉そうなこと言って。自分だって大差ないじゃない。」
「大差ないどころか、俺はいまだに初恋の真っ最中だからな。生駒さんみたいに誰かと別れたこともないし、告白ってフラレたことも、告白されたこともないんだぞ。どうだ、凄いだろ。」
 胸を張ってみせると、彼女はクスクスと笑った。

「それ凄いって言うの?全然すごくなくない?笑。」
「だなぁ。どうしてだろうなぁ。おかしいよなぁ。ずいぶん長いこと付き合ってるし、いろんなことがあったような気がするんだけど。」
「そうだね。いろいろあったね。」
彼女は穏やかな笑顔で目を伏せた。大人びた表情。女性らしい仕草。彼女もずいぶん変わったな。と思う。

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