坂道では自転車を降りて

「ねぇ、俺が何もかも未経験なのは、どうしてだと思う?」
ちょっとだけ。意地悪を言ってみる。なんて答えるだろう。
「。。。。。やっぱり不満?」
「別にィ。」
彼女が少し考えるような顔をする。
「何?させてくれるの?」
笑顔でからかうと、
「今はダメ。」
笑顔で返してきた。
「だな。いいよ。卒業してからで。俺もその方が良いし。」
こんな話を2人とも笑顔でできるようになった。俺達はもう大丈夫だ。きっと。

「ねぇ。」
「なに?」
「神井くんとキスがしたい。」
「今?」
「うん。今。」

 珍しく彼女の方からキスをねだってきた。照れも甘えもなく、はっきりと言葉にする。こんな風に気持ちをはっきり言葉にしてくれる時もあるのに、どうでも良い事や、結構大事なことを隠したりする彼女の思考は、いまだに理解不能だ。それでも心は近くにあると、今ならなんとなく分かる。

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