坂道では自転車を降りて
俺は頷くと、無言で自転車に跨がって走り出す。彼女も無言でついて来る。公園に着いて自転車を停めると、彼女も隣に自転車を停めた。俺はゆっくり走ったつもりだったけど、彼女は必死でついてきたらしい。息を弾ませて、ちょっと苦しそうだ。そういえば、彼女はママチャリだし、俺のロードバイクモドキとは疲れ方も違うだろう。
彼女が自転車を立て終わるのを待つのももどかしく、抱き寄せると、彼女は俺の胸に倒れ込んできた。優しく抱いて彼女の息が整うのを待っていると、彼女は笑顔で俺の制服を掴んで顎をあげて目を閉じる。あんまりストレートなおねだりに、俺は照れる暇もない。紅潮した頬。柔らな唇にそっと口づける。久しぶりの彼女の感触。甘い吐息。
もう一度、深いキスをしようと唇を近づけたら、彼女はすっと顎を引いた。まだ苦しかったかな。
「生駒さんが。。」
「なに?」
「羨ましいって。私のこと。」
ギクリとする。なにこのフェイント攻撃。
「以前、神井くんに告白しようとしたけど、聞いてもらえなかったって。言ってたよ。」
「。。そ、、そんなことあったかな。」
なんでそんなこと話しちゃうんだよ。あの子は。心臓がドクドクを音をたて始めたけど、必死で隠す。彼女は少しの間黙って俺を睨んだ後、俯いて、ちょっとだけ頬を膨らませてから、小さな声で「ぶぅ。」と言った。
この前のことも聞いたのかな。聞いてないのかな。でも多分、大丈夫なんだろう。だって激レアの怒ったような拗ねたような表情もすっげー可愛いんだから。
俺はなんだか嬉しいような、切ないような気持ちで胸がいっぱいになって、彼女をぎゅうっと抱き締めた。