坂道では自転車を降りて

「わかったよ。まあいいや。俺、そろそろ帰るわ。」
荷物をまとめて立ち上がりながら原が言った。
「えっ。もう?」
「もういいんだ。大野さんの話が聞けたから。神井とはいつでも会えるし。じゃあ、お二人さん、がんばってね。」
「あぁ。」

「大野さん。」
帰ろうとした原が振り返る。
「なあに?」
「もう少し神井の気持ち分かってやってよ。」
「えっ。どういう意味?」
「神井に聞きな。またね。」
 きょとんとしている彼女には答えず、原は俺をみて苦笑いした。俺も苦笑いで返した。まったく、おかしな課題を残して逃げやがった。

原が消えると、早速彼女が尋ねて来る。
「ねぇ、今のどういう意味?」
「うーんと、、、」
「私、また変な事言った?」
「言ったと言えば言ったけど、、もう今日はやめとこう。上手く説明できる自信がないし、あいつにも何か誤解があるようだから。君が、真面目で真剣なんだと言う事がよくわかったってだけだ。今日のところは。」
「ふーん。」
 彼女はそれ以上は聞いてこなかった。最近は彼女も俺達の間に埋まる地雷を、敢えて踏もうとはしなくなった。

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