坂道では自転車を降りて

 原は気付いてないだろう。彼女自身もまだ受け入れてない。俺だけが知ってる本当の彼女は、優等生なんかじゃない。不安な夜に耐えられず、夜中に俺の窓辺へやってきてしまうような純情で幼稚な娘だ。自分の中の激情に怯えて、優等生の殻に閉じこもって震えている、ややこしい女の子。今はその殻の中にいたほうがいい。春になったら、俺がその殻を外から叩くから。その時、君は殻から出てきたら良いんだ。俺はそのままの君を抱きしめてあげるから。

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