君色ドラマチック


「知らねえよ!俺は忙しいんだ!」

「いてて……」

「じゃあな。このバカと離婚したら迷わず俺の事務所に来いよ。待ってるから」


櫻井さんは最後の最後まで悪態をつくと、結城の手から羊羹を奪ってその場を去った。

結局ようかんは食べるんだ……。
うん、食べ物に罪はないものね。栗ようかん、美味しいものね。


「それにしても悪いことしちゃった……」

「大丈夫。あの人ああ見えて、心広いから。翌日ケロッとしてるタイプ」

「それは結城でしょ」


帰り道、櫻井さんのことを考えて少し落ち込む。

お世話になったのに、恩を仇で返すようなことしちゃった。


「おい」


怒ったような結城の声がして、顔を上げる。


「なに?」

「お前、そろそろ俺のこと名前で呼べよ」

「は?」

「ずっと結城結城って、それ名字だぞ」


知ってるけど……。

だって下の名前、玲音って言うんでしょ。日本人のくせに。

キラキラネームとまでは行かないけど、人前で呼ぶのは気恥ずかしい名前と言うか、何と言うか。


< 106 / 107 >

この作品をシェア

pagetop