君色ドラマチック
「知らねえよ!俺は忙しいんだ!」
「いてて……」
「じゃあな。このバカと離婚したら迷わず俺の事務所に来いよ。待ってるから」
櫻井さんは最後の最後まで悪態をつくと、結城の手から羊羹を奪ってその場を去った。
結局ようかんは食べるんだ……。
うん、食べ物に罪はないものね。栗ようかん、美味しいものね。
「それにしても悪いことしちゃった……」
「大丈夫。あの人ああ見えて、心広いから。翌日ケロッとしてるタイプ」
「それは結城でしょ」
帰り道、櫻井さんのことを考えて少し落ち込む。
お世話になったのに、恩を仇で返すようなことしちゃった。
「おい」
怒ったような結城の声がして、顔を上げる。
「なに?」
「お前、そろそろ俺のこと名前で呼べよ」
「は?」
「ずっと結城結城って、それ名字だぞ」
知ってるけど……。
だって下の名前、玲音って言うんでしょ。日本人のくせに。
キラキラネームとまでは行かないけど、人前で呼ぶのは気恥ずかしい名前と言うか、何と言うか。