君色ドラマチック
「結城?」
櫻井さんも、結城に気づいたみたい。
今にも呼び止めそうな様子で口を大きく開けた彼を、必死で止めた。
「あのっ、行きましょう。きっと人違いです」
「いや、あの赤い髪は結城だろ」
「私には赤いのかどうかわかりません!」
ぎゅっと櫻井さんの手をにぎって、むりやり引っ張る。
すると、彼は眉をひそめながらも、おとなしく従ってくれた。
それから櫻井さんが連れてきてくれたのは、まさかの夜景が見えるレストランだった。
大きなガラスの向こうに、街の灯りが星のようにちりばめられている。
色はわからなくても、光の明るさはわかる。
こんな私でも、その夜景は素直にキレイだと思えた。
「こんなところ、初めてです」
結城は料理が好きだから、ほとんど外食をしない。
というわけで、こういうところに連れてきてもらったこともない。
「ふうん。今までろくな男と付き合ってこなかったんだな」
「うっ……」
そんなことないもん。ただ、考え方の違いというか……。
……もしかして、私が色がわからないから?
焼肉に行ったって、自分で焼けたかどうだかわからないから?
お寿司を食べに行っても、マグロとサーモンの区別もつかないから?
もしかして、そんな私と外食したら恥ずかしいと思ったのかな。
ひとりでどんどんと悪い方向に考えてしまい、心が沈んでしまう。