君色ドラマチック


「結城、彼女が急に早産になってしまったからだって……」

「そんな下手な嘘ついたのか?なってないよ。それどころか彼女、未婚だよ。フリーで、基本は自宅で仕事してる」


嘘……。

それ以上は料理が喉を通らなくなった。

完全にナイフとフォークを置いてしまった私を見て、櫻井さんはウエイターにお皿を下げさせる。


「だから、前回忠告してやったんだよ。結城のブランドから外される覚悟を、しておいた方がいいと」


いや、そんな親切な言い方じゃなかったし……。

それより、結城が自分のブランドを作るっていうのは、本当なんだろうか。


「趣味で今のブランドとは別の服を作りたくなったんじゃ?あいつ、服オタクだから」

「趣味なら、自分で全部作ればいいだろ。デザイナーだって、パターンも裁断も縫製も、一通りわかってるわけだし」


たしかに。しかも結城は、デザイナーとしてひとつのブランドを任されるようになってからは、そっちの仕事に一生懸命で、趣味で服を作ることはなくなっていた。

それに、ただの趣味なら、わざわざ私に嘘をついてまで、ほかのパタンナーを紹介してもらわなくても良かったはず。

私だって、良かったはずなのに……。


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