君色ドラマチック


ええと……もしかして今私、熱烈に口説かれてる?もちろん、パタンナーとして。

これだけ人に褒められたら嬉しくなりそうなものなのに、私の脳はどこか冷たく、この場を客観的に見ていた。

私がそんなに才能あるパタンナーなら、どうして結城は他のパタンナーを探したりするの。


「ごめんなさい……突然すぎて、ちょっと」

「まあ、そうだよな。今決めろなんて言わないから。気が向くまでゆっくり口説くさ。とにかく、今は食べろ」
なんとか空にしたサラダの皿が下げられ、スープが運ばれる。

「いえ、私、今の会社を辞める気は……」


独立すると言っても、それが成功する保証はない。

それに、この人と一緒に一からブランドを立ち上げるなんて……きっと、とんでもない苦労が待ち受けているだろう。

完全に逃げ腰の私に、櫻井さんはずけずけと言う。


「本当にいいのか?ずっと結城の金魚のフンで」

「フンって」


なんてひどい比喩。


「金魚についていられるうちはいいけど、そのあとどうなる?金魚鉢の底に沈むだけだぞ。そろそろ、お前も自立するってことを考えた方が身のためじゃないか?」


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