君色ドラマチック


「おい、そろそろ起きろって……起きてたか」

「ぎゃああああ!!」


何の前触れもなく開いたドアから、ちゃんと着替え済の櫻井さんが顔をのぞかせる。

私は咄嗟に、シーツを手繰り寄せて体を隠した。


「なんだその妖怪を発見したような悲鳴」

「だだだだ、だって……」

「何も覚えてないか」


櫻井さんはにやりと笑い、ベッドに腰をおろす。

私はベッドのふちまで、にじりにじり逃げた。


「ひどいな。俺たちは昨日、想いが通じあったんじゃないか」

「ほぅ!?」


ということは……ということは……やっぱり、私……。

最低だ。もう舌を噛み切って死のう。


「失礼な奴だな。そんな世界の終わりみたいな顔するなよ」

「へう……」

「大丈夫だって。冗談。お前、ワインはこぼすしゲロするしで大変だったんだぞ。仕方なく脱がせたけど、なんだそのガリガリの体。だからもっと食えってんだ」

「じゃ、じゃあ……」

「やってない。ぐったりした酔っぱらいとやっても、楽しくないから」


そう聞いて、やっとホッとした。

どうやらものすごい醜態をさらしたらしいけど、とにかく、いたしてはおらぬ、と。


< 54 / 107 >

この作品をシェア

pagetop