君色ドラマチック


「いえ、ご迷惑をおかけするといけないので」

「じゃあ、これ。昨日の靴。服はシミがついてたけどどうする?」

「捨ててください!またメールします!」


私は櫻井さんから紙袋を受け取ると、急いで玄関を開けた。


「って、ちょっと待って。駅はどっちですか?」


慌てて振り向くと、櫻井さんはぷっと吹き出した。


「ちょっとだけ待ってろよ。会社の近くのコンビニで降ろしてやるから」


そう言うと、自分はまだ余裕な時間のはずなのに、櫻井さんは手早く準備をし、本当に私を助手席に乗せてくれた。

お腹に置いた紙袋の中では、何度も履いた靴がちゃんと箱に入れられていた。

この人、服への愛情がない人なんかじゃない。

結城とはタイプが違うけれど、この人も服が大好きなんだ。

私は櫻井さんを誤解していたことを、心の中で詫びる。

そして、引き抜きの話を、少し考えてみてもいいかなという気になっていた。


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