君色ドラマチック


やっと終業時間になると、私はさっと帰り支度をして席を離れた。

デスクの下に置いておいた紙袋。この中に昨日の靴が入っていると誰かにばれたら、昨日お泊まりしたということが明白になってしまう。

パタパタと廊下を小走りして社外に出る。


「脱出成功……!」


はあはあと荒い息をして立ち止まった途端、視界がくらりと揺れた。

あれ、なにこれ……。


「慧!」


結城の声が聞こえ、失いかけた意識が戻る。

気づけば、私は結城に後ろから支えられていた。


「なにやってんだよ。貧血か?」


貧血……そうかも。昨日は全部戻しちゃったみたいだし、朝も昼も血肉になるものをろくに食べなかったから……。


「櫻井さんの仕事、だいぶ早く仕上げたんだって?疲れが出たんじゃないのか」


それもあるかも。

それよりなにより、結城に悟られちゃいけない。

私はぱっと彼から離れた。


「そうかも。大丈夫、家に帰って寝るね。ここで長居すると、社員に見られ放題だし」


落としたカバンを回収して、えっと、何か忘れているような……。


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