君色ドラマチック
さっきのはさすがに怖かったけど、やっぱり結城の傍が一番落ち着く。
夜景の見えるレストランなんか、もう行けなくてもいい。
コンプレックスがあるからって、着慣れない服を着て、他の人間になりすまさなくてもいい。
私のことを考えて、こんなにおいしいご飯を作ってくれる人がいる。
それでじゅうぶんじゃない……。
食事中の会話は、ほとんどなかった。
食べ終えて、片付けくらいはしようとシンクに食器を運ぶと、『俺がやるから』と、キッチンから追い出されてしまった。
仕方なくテーブルに戻り、出されたお茶を飲んでいると、結城が口を開く。
「で、どうしてわざわざ古い靴を箱に入れて持ち歩いてたんだ?」
ぶっとお茶を吹きだしそうになり、こらえ、結果盛大にむせた。
あれが私のものだということに、結城が疑いを持つはずがない。
だってあの靴は、結城が去年の誕生日にくれたものだもの。
「ええと……非常に気に入っているので、空き巣にとられないように持ち歩こうかと」
「嘘つくな。今までそんなことしなかったくせに」
うっ。やっぱり苦しかったか。
感情のすべてが表情に出てしまう私には、嘘は向いていないみたい。
下手な嘘をつけばつくほど、墓穴を掘っていくような気がする。