君色ドラマチック


「実は……」


私は思い切って、昨日のことをすべて話した。

もちろん、結城と櫻井さんの独立や、パタンナーを交換した件はひかえて。

話すうち、結城の穏やかだった顔に、不穏な雰囲気が立ち込めていく。


「お前は……アホかっ!」


やがて、カウンター越しに結城の長い手が伸びてきて、私の鼻をぎゅっとつまんだ。

食器用洗剤の泡が鼻の穴に入って、しみる。


「いたーい!」


結城が手をはなす。

私はティッシュで濡れたままの鼻を包んだ。


「櫻井さんとメシに行ったことはいいよ。仕事上のつきあいなら、それくらい。でも、どうして前後不覚になるまで酒を飲むんだ」


テーブルに肘をつき、至近距離で私を見つめる、結城の瞳。

いつもは少し眠そうにしているのに、今はぱっちり開いて、しかもつりあがってる。


「ええと……櫻井さんと何話していいのかわからなくて、間を持たせようと飲んでいたら、いつの間にか訳がわからなくなって……」

「そうか、慧は櫻井さんが嫌いだったもんな」


そうそう。嫌いだったの。昨夜までは。

こくこくと首を縦にふると、結城は人差し指で私の鎖骨の真ん中を突く。


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