君色ドラマチック
「突然いなくなるなよ」
聞いたこともない、泣きそうな結城の声色が、耳をくすぐる。
「ごめん」
「話は課長に聞いたけど、納得できてない。何度も電話したのに、通じないし。櫻井さんは個人情報保護がどうのとか言って、何も教えてくれないし。都合悪く出張が入って、アパートに押しかけることもできなかった。心配した」
責められて当然だ。
何年も付き合ったのに、さよならも言わずにフェードアウトしようとしたんだもの。
だって、勇気がなかったんだ。
さよならなんて言ってしまったら、今まで過ごした日々が全部嘘になってしまうような気がして。
「でも、結城だって何も教えてくれなかったじゃない」
「は?」
「森さんに、何の仕事を頼んだのよ」
涙をぬぐって見上げると、結城は驚いたように目を丸くした。
「知ってるのか?」
「私に内緒でこそこそ何かを作ってたってことはね」
嫌味を込めて言ってやったのに、なぜかホッと安心したように息をつく結城。
その様子を見たら、急に怒りがわいてきた。
「なによ!私、悲しかったんだから。他のパタンナーさんに仕事を依頼するし、そのことを言ってくれればいいのに、秘密だし。私の目がこんなだから、ついに面倒くさくなって見放されるのかと思って、どれだけ……」