君色ドラマチック


言っている途中で、自分が情けなさ過ぎて、また涙が出てきた。

ぐっと唇を結んで、黙って涙をぬぐう私の肩をつかんで、結城が言う。


「何言ってるんだよ。面倒臭くなるわけないだろ」

「だって……」

「慧は、慧にしか見えない世界を見ている。それだけだ。そんなの、俺たちが傍にいるのに、なんの障害にもならない」


結城は、ぬぐいきれなくなった私の涙を、親指ですくう。

その目は私をいたわるように、優しい光を放っている。


「おいで、慧」

「えっ?」

「何を作っていたか、見せてやるから」


結城は突然、私の手を引いて歩き出す。

歩き出すと言うより、駆け出すと言った方が正しいくらいの勢い。

高さのあるソールの、Vivienneの黒いロッキンホースを履いてきてしまった私は、足がもつれて倒れかける。

そんな私を軽々受け止めて立たせると、結城は再び競歩の勢いで歩き出す。


「ここからそう離れてないから」


そう言われ、20分ほど歩いただろうか。

たどり着いたのは、ただのアパートにも見える、レンガ色の建物だった。

空を見上げると、小さな星が光っている。いつの間にか日が暮れていたみたい。


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