有害なる独身貴族

店の前の道路に路駐されたワゴン車の運転席には、30代後半くらいの女性が不機嫌そうな顔で待っていた。


「遅いよ、浅黄ママ」

「ごめん、幸太ママ。でもほら、お野菜バッチリよ」

「調味味噌も入れておきましたよ」


営業スマイルで対応する店長。
不機嫌そうだったその女性は、店長を見るなりコホンと咳払いをし、急に愛想よくなって頭を下げた。

私と店長で、後部の荷台に荷物を載せる。
既に炭や保冷バックがあったから、こっちはバーベキューの材料だろうか。

子どもたちは後部座席に、茜さんは助手席に乗り込むと、「ばいばーい」といつもの明るい調子で行ってしまった。

私が後ろ髪引かれる思いで車が小さくなるのを見つめている間に、店長はさっさと店の中に入ってしまった。

まだ興奮が冷めやらない。
茜さんの存在が眩しすぎて、目がくらんでいるような感じ。

私は慌てて店長の後を追った。


「し、知らなかったです」

「何を?」

「茜さん、お子さんがいらっしゃったなんて」

「まー、見えねぇよな。見た目若いし」


だけど、浅黄くんと一緒にいると“ママ”に見えた。
普段一人で来るときや、店長と一緒にいる時は、独身の女の人にしか見えないのに、子供の前ではちゃんと母親だった。


「あの子ハーフなんですか?」

「そうらしいな。父親は留学生だったって聞いてる。学生当時にしばらく付き合ってたものの卒業して本国に帰ったら自然消滅だと。……子供ができてると分かったのは帰国後だそうだ」

「じゃあ認知は?」

「伝えてねぇんじゃねぇかな、茜」


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