有害なる独身貴族
茜さんはニッコリ笑うと、「つぐみちゃん、橙次が好きなのね?」と続ける。
言い当てられて、もう誤魔化しようもなくてただ顔をおさえていたら、「もしかして私、目の上のたんこぶだったりする?」と茶化された。
「違います。そんなんじゃ」
「デート行こうとか言ったりしてるもんなぁ。でもあれって、大きい物買うのに付き合ってもらってるだけなのよ。……橙次とは友達、ホントよ?」
茜さんは私に背中を向けた。後ろが広く開いたワンピースからは肩甲骨のラインが見える。
彼女の綺麗な背中と、薄暗い路地裏の風景はなんとなくミスマッチだった。
「でも……そうね。あなたが疑うようなことはしてる。……ううん、してた、かな。セフレってやつ? 昔酔っ払って一回しちゃってから、時々頼んでた。私のほうからよ。……でも、それも一年位前までよ?」
「え?」
「もうやめようって橙次が言ったの。浅黄が小学生になったからかなと思ってたけど、違うわね。橙次にも考えを改めたいと思うことがあったのよ、多分」
一年前。
私が仕事に入った頃。
それと合致すると思うのはうぬぼれだろうか。
「付き合うとか、結婚するとかって話には、行かなかったんですか?」
「そうね。言われたとしても……しないと思うわ。だって私、幸せになりたいんだもの」