有害なる独身貴族
続いて、紫藤さんという私と同年代くらいの女性がやってくる。
背丈は私と同じくらいだけど、彼女は雰囲気がとても柔らかく女らしい。
可愛い女性ってこういう人のことを言うんだよねと、彼女を見るたび密かに劣等感を感じたりもするのだ。
「こんばんは、房野さん。今日のお料理も楽しみー」
「こちらこそ紫堂さんのご意見いつも参考にさせていただいています」
「やだぁ、そうやってすぐ調子に載せるんだから。……あ、北浜さん、お久しぶりでーす」
待ち受ける北浜さんも嬉しそう。
歓談する二人を横目に、お冷とおしぼりを用意すると、入口付近で話し声が聞こえた。
どうやら刈谷さんが登場らしい。
「皆さん、お待ちです。こちらへどうぞ」
いつもと同じ数家さんの営業スマイル。
あれ、でもなんか空気がピリピリしているような。
続いて入ってきたのは、数家さんと同じくらいの背丈の男性だ。続いて刈谷さん。
あれが、新しいモニターさんかな?
二人を小上がりまで連れてきた数家さんは、営業スマイルを貼り付けたまま応対する。
新しいモニターさんは谷崎さんと言うらしい。
刈谷さんの同期というだけあって、仲が良さそうだ。
遠慮のない距離感で、事情を知らなければ、刈谷さんの彼氏かなと疑うくらい。
「店長、皆さん揃いましたよ」
「ん。じゃあ、料理運んで」
「店長は出ないんですか?」
「料理人は厨房にいるもんだ」
店長は、お客様がいる時はあまり店内に出てこない。
前に数家さんが彼女を連れてきた時くらいかな、わざわざ座席まで出て行ったのは。