有害なる独身貴族


 そのまま片倉さんに急かされて手紙を書き、上田くんが何故かお使いに出される。
ふてくされた彼は、「あーもう、何でもいいです」と素直に郵便を出してきてくれた。

夜の開店時間を過ぎるとその後は忙しく、私は客席、片倉さんは厨房と、それほどの接点もなく仕事をこなした。
仕事終わり、果たして私は帰るべきなのかウロウロしていると、片倉さんが口を開いた。


「つぐみ、送っていけないけど気をつけて帰れよ」

「はい」


腕まくりをしている片倉さんはまだまだやることのありそうだ。

途中まで数家さんと一緒に行き、駅からは急ぎ足で部屋まで帰る。

迎えてくれるのは、明かりのついていない物音のしない部屋。


「ただいま、おばあちゃん」


入り口付近の祖母の写真に声をかけて、返事がこないことに違和感を感じる。

数日片倉さんがいてくれただけで、今までは当たり前だったことが寂しく感じるなんて不思議だ。



 大方寝る準備まで終えた頃、片倉さんから電話がかかってくる。


「もう寝てたか?」

「いえ。片倉さんは今から帰りですか?」

「ああ」

「……うちに、来ます?」


思い切って言ってみたら、小さく笑う声が聞こえた。


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