有害なる独身貴族


「今から行って紳士的になれる気もしないからやめとくよ」


それは、手を出しちゃうって意味ですか。
返答に困って黙っていると、片倉さんが小さく笑う声が聞こえた。


「つぐみ、男とつきあうの初めてなんだろ? 俺、今浮かれてるからさ、色々歯止めがきかない。暴走してる時はちゃんと止めろよ」

「数家さんみたいにですか?」

「そう」

「……難しいなぁ」


歳が離れてるのにいいコンビって思っていたけど、数家さんがちゃんとストッパーになれるから二人の関係は成り立つんだよね。

私も彼のようにならないきゃいけないのか。なんか、凄く頑張らなきゃいけない気がするけど。


「頑張れよ。お前を壊したら一生立ち直れない」

「壊れませんって。案外頑丈ですし」

「ならいい。ゆっくり寝ろよ……お休み」


時々、彼が落とす怯えたような一言から、まだ過去のトラウマを消しきれないのが感じられる。

とは言え、好きに手を出して下さいといえるほどの度胸は私にもない。
もちろん初めての相手は片倉さん以外には考えられないんだけど、人の話を聞いての想像ばかりが膨らんで、痛いとか怖いとかいうイメージばかりがついている。


「それでもいいから来て下さいって……言えばよかったのかなぁ」


こんなことも、いつか、自然と乗り越えられる日が来るかしら。


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