有害なる独身貴族
*
それから数日後。
よりにもよって夜の部の忙しい時間に、その人はやってきた。
扉が開いた瞬間、一番入り口近くに居たのは私だ。
「いらっしゃい……」
ませ、まで言えずに、私は息を止めてしまった。
「つぐみ」
そこには大柄な男の人が、右手に封筒を握りしめて立っていた。
私とよく似た、丸顔に丸目の年齢より若くみえる童顔。以前に比べてトップリと太ったその人は、私の父だ。
「お父さん」
「なんだ、これは」
ここが、店であることも考えずに、父は握りしめた封筒を突き出し、怒りを露わにする。
入り口付近の席でざわめきが湧き、数家さんが空気を察してやって来たので、私は慌てて父を追い立てた。
「お父さん、ここは職場だから。話なら外でしよう」
私は数家さんに「ちょっと抜けます」と告げ、父の背中を押すようにして店を出て、脇の路地へ入った。
表通りが綺麗で華やかなのに比べて、脇路地は全体的に薄汚れている。
父親は嫌そうな顔で周りを見回し、苛立ちを隠そうともせず、私にもう一度問いかけた。
「どういうつもりだ。なんで今更こんな手紙をよこした」
宛名はおじいちゃんにしたはずなのに、封が開けられている。
「おじいちゃんは見たの?」
「見せてない」
それから数日後。
よりにもよって夜の部の忙しい時間に、その人はやってきた。
扉が開いた瞬間、一番入り口近くに居たのは私だ。
「いらっしゃい……」
ませ、まで言えずに、私は息を止めてしまった。
「つぐみ」
そこには大柄な男の人が、右手に封筒を握りしめて立っていた。
私とよく似た、丸顔に丸目の年齢より若くみえる童顔。以前に比べてトップリと太ったその人は、私の父だ。
「お父さん」
「なんだ、これは」
ここが、店であることも考えずに、父は握りしめた封筒を突き出し、怒りを露わにする。
入り口付近の席でざわめきが湧き、数家さんが空気を察してやって来たので、私は慌てて父を追い立てた。
「お父さん、ここは職場だから。話なら外でしよう」
私は数家さんに「ちょっと抜けます」と告げ、父の背中を押すようにして店を出て、脇の路地へ入った。
表通りが綺麗で華やかなのに比べて、脇路地は全体的に薄汚れている。
父親は嫌そうな顔で周りを見回し、苛立ちを隠そうともせず、私にもう一度問いかけた。
「どういうつもりだ。なんで今更こんな手紙をよこした」
宛名はおじいちゃんにしたはずなのに、封が開けられている。
「おじいちゃんは見たの?」
「見せてない」