有害なる独身貴族
「……俺も、ばあさんも、お前のことは可愛かった」
「知ってる。私だって、おじいちゃんたちといるの嬉しかった。でも」
厄介になっている、という意識が遠慮につながって全てが食い違ってしまった。
「……あの頃は自分に自信が持てなかったの」
自分に、愛される価値があるなんて思えなかった。
ただ、嫌われないようにとだけ思って生きてきた。
「じゃあ、今は自信がついたんだな」
おじいちゃんはそう言い、ご飯をよそってきた橙次さんを目を細めて見つめた。
「うん? ご飯でよかったんですよね?」
「……自信がついたのはこいつのお陰か?」
問いかけるおじいちゃんに、頷くことで返事をする。
話の流れが分かっていない橙次さんは、首を傾げて、「鍋は締めの雑炊まで食べないと」と鍋の残り汁にご飯を投入する。
少し煮込んだところで、よくといだ卵を入れ、取り分けてから、彼はおじいちゃんの向かいに立った。
「お味、どうです?」
「旨い。体に染み渡るようだな」
「でしょう。俺はこの店、つぐみに会わなかったらきっと作れなかった。彼女とは昔、ほんのちょっとだけ会話したことがあるんです。その時、自分のやりたいように生きる力を貰った。あなたが心配するように俺は彼女の父親のような歳ですけど、大切に思っている気持ちに嘘は無いです」
「……二人して似たようなこと言うんだな」
おじいちゃんの口元が緩む。
おばあちゃんがいた時みたいな穏やかな顔。嬉しくて胸がツーンとしてきた。