有害なる独身貴族


その後、私は店内の掃除をした。
トイレには神様がいるって歌もあったし、ここは特に綺麗にしよう。

一通り終えたら、しっかり手を洗って今度はテーブルの消毒。
箸や調味料なんかの残量を確認して足りなければ追加する。

そうこうしているうちに、裏口から数家さんの声がした。
彼はいつも他の夜番の人より一時間は早く来る。


「あ、店長、お疲れ様です」

「おう、光流。昨日電話した件だけどさ」

「ラタテュイユでしたっけ。俺今回和風が良かったのに」


数家さんは事務所に行く前に、厨房にいる店長と話始めた。

厨房に近いテーブルの調味料を確認したりテーブルを拭いたりしていると、会話をラジオを聞いている時みたいな感覚で耳に入ってくる。


「お前は刈谷ちゃんに食わせたいだけだろ。最近残りモン持っていってるみたいじゃねぇか」

「だって捨てるの勿体無いでしょう。いいじゃないですか。別に仕事に支障きたしているわけじゃないですし」


おっと。だんだん突っ込んだ内容になってきた。
これ、私聞いてたらまずいのかなぁ。

数家さん、刈谷さんにちまちま会いに行ってるのか。
そうだよね、OLさんだもんね。私達がお休みの日はお仕事だろうし。
職種が違うと付き合うのにも結構な労力いるよなぁ。

淡白そうに見えたのに、案外、数家さんは情熱的なんだな。
それとも、恋をすると人は変わるのかしら。


「そんな訳で試食会のセッティング頼むわ。今回からつぐみにも手伝わせて。あと、北浜さんには俺から連絡しておく」

「分かりました。写真あります?」

「昨日作った時撮っておいた。パソコンの中はいってっから」

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