有害なる独身貴族
「店長、いますか? 茜さん、来てますよ。店の入口鍵しまってて入れないって」
「あ? そういや、開けてなかったか。ワリィ、つぐみ、開けて」
「分かってますっ」
走って店の入口まで行き、内側からかけられた鍵を開ける。
「すみません、茜さん、入ってください」
「つぐみちゃんが来てくれて良かったわぁ」
うふふ、と笑いながら入ってきた茜さんは、肩に下げていたワンショルダーをテーブルに置き、椅子に座る。
座り方がまた綺麗。
「茜、一人か? 荷物持ち連れて来ればよかったのに」
「えー、一人じゃ持てない量?」
「六十人分だろ? 結構な量だぞ? まさか歩きじゃないよな」
「車は友達が出してくれてるのよ。でも、今炭買いに行ってるんだよね。駅まで持ってくわーって言ったんだけど、無理そうか。じゃあここに迎えに来てもらう」
そう言って鼻歌まじりにスマホをいじりだした。
「つぐみ、茜にお茶入れてやって」
「はい」
普段着のまま厨房に入った。
お湯は電気ポットに入っていそう。
お茶の準備をしていると、店長は、発泡スチロールのケースに、袋に入った大量の野菜を入れ始めた。
大根や人参はきちんといちょう切りに、里芋は剥かれて水につけられた状態で小袋に入っている。
「店長、それは?」
「ああ、茜に頼まれてた野菜。バーベキューと芋煮するんだと。材料揃えて切っとけって言われたんだよ」
「この時期にですか?」