有害なる独身貴族
今は六月、アウトドアには気持ちいいけど、芋煮自体は秋のイメージだ。
疑問形のその声に答えてくれたのは電話を終えた茜さんだ。
客席の方からこちらを覗き込むように体を曲げていて、私がお茶を持って行くと嬉しそうに手を伸ばす。
「この時期が一番余裕あるのよー。なんてったって、二学期は忙しいじゃない? 運動会やら発表会やら」
「ねぇ」と同意を求められて、「ああそうですね」って単純に返してみたけど。
運動会?
発表会?
それって。
「……って、え?」
私はよっぽど変な顔をしていたのか、茜さんが途端にケタケタ笑い出した。
「あら、知らなかったの? つぐみちゃん」
「だ、誰の運動会に行くんですか? 親戚の方とか?」
いや、でも親戚の子供の運動会とか行かないか?
「やだぁ、私の子のよ。小学二年生なの」
「うそっ、茜さん、子どもいるんですか?」
三十歳を超えているとは聞いた。でも子供を産んだなんて思えないほど若く見える。
しかも小学二年って結構大きいよ?
思わず、店長を見た。
まさか、隠し子?
丁度、ダンボールを運んできた店長が、途端に私の脳天に一撃を繰り出す。
「違うぞ」
「まだ何も言ってないじゃないですか」
「言わなくても分かる。俺には隠し子などいない」
「そうよー。橙次の子じゃないわよー。そもそもうちの子八歳だもん。その頃、橙次とは出会ってもいないわ」
ケタケタと楽しそうに笑う茜さん。
楽しそうなのはいいんだけど、笑い事にしちゃっていいのか?