やさしい恋のはじめかた
困った、どうしよう。
そう自問しているうちに桜汰くんの手が髪から離れ、気づけばあっという間にカットが完成してしまっていた。
「……で、話って? なかなか言わないから、もうカット終わっちゃったんだけど。さっきの威勢ももうないし、ずっと顔も真っ赤だし、もしかして告白? だったらめっちゃ嬉しいんだけどな」
そう言って鏡越しに苦笑交じりに見つめられて、その瞬間、胸が大きくドキンと跳ねた。
さっきからずっと熱かった顔にますます火照りがプラスされて、もう鏡が直視できない。
でも、ここまでお膳立てされても言えないなんて、なんのために髪を伸ばしてきたというんだろうか。
髪を伸ばしたのは、みんなへの信頼の証、私は大丈夫ということの証明、それから、きっとずっとずっと好きだった桜汰くんへ想いを伝えるためだ。
桜汰くんへ向かって一歩一歩、自分の足で歩いてきた自負もある。
会社のみんなのサポートをしてきたこの一年で、自分基準だけれど、自信もついた。
だったらなにを迷う必要がある? 今も桜汰くんは待ってくれているのに、私から言えないでどうするの?
「あの、ね。……す、好き……桜汰くんが。つ……つき合いたい……」
やっとのことで絞り出した声は、今にも消えてしまいそうなほど、か弱いものだった。
だけどこれが、私の心からの気持ち。
この一年、ずっと温めてきて、ようやく伝えられる段階までよちよち歩いてきた、私の本心だ。