やさしい恋のはじめかた
しばらく閉ざしていた桜汰くんの口から発せられた言葉は、まるで銃で撃たれたかような衝撃を伴って私の鼓膜を震わせ、脳内に届いた。
え、今、なんて……?
誰の仕事も彼氏も合っていないって?
言ったことは分かったけどすぐには意味が理解できずに数度瞬きをすれば、桜汰くんは一言一句を言い聞かせるように同じ台詞を繰り返す。
「長かった髪をここまで短くさせるくらい精神的に追い詰める仕事も、里歩子をこんなふうに泣かせる彼氏も、俺にはどっちも合ってるようには見えないってずっと前から思ってた。それでも、里歩子が髪を切ることで気持ちを切り替えてまた頑張れるならいいかな、とも思ってたよ。……でも、里歩子の泣き顔を見るのも、髪を切るのも、もう限界。頼むからもっと自分を大切にしてやれよ。髪だって里歩子の一部だろ」
「……」
「頼むよ。これ以上、自分を切り落とすなよ」
「桜汰くん、何言って……?」
声が、震える。
哀しげな目をしてショートボブの私の髪を見つめる桜汰くんにどうしようもなく声が震えて、それ以降、何も言えなくなってしまった。
それに、いきなりそんなことを言われてもすぐに何か言葉を返せるわけもなかった。
桜汰くんには適わないかもしれないけど、私にだって今の仕事に意地もプライドも持っているし、大海のことが好きだからこそ、こんなにも悩んでいるわけで、『どっちも合ってないってずっと思ってた』なんて言われたところで、今はとにかく動揺する気持ちしかない。