やさしい恋のはじめかた
「え……」
「気づかなかった? ずっと好きだったよ」
「っ!?」
思いもよらなかった桜汰くんからの告白に、思わず涙が引っ込み、頭が真っ白になる。
ずっと好きだったって、まさか……。
だって今まで、そんな素振りなんて一つも。
というか、いつから?
頭が混乱を極める中、驚いた顔を隠しきれなかったのだろう私を見てふっと表情を和らげた桜汰くんは、睫毛を伏せながら語り始める。
「始めはとにかくカットモデルを引き受けてくれる人を探して声をかけたけど、里歩子が今の彼氏とつき合いだしてしばらくした頃から、なんか胸がモヤモヤして。仕事でも、次へのプレッシャーでどんどん自分を追い詰めてってさ。そんな里歩子を見てるうちに、いつの間にか好きになってた。自分でも驚いたけど、里歩子が今の恋を幸せに感じてる限りは言うつもりはなかったし、応援したい気持ちも本当だった」
「……」
「だけど、事情が変わった」
そこで言葉を区切った桜汰くんは、再び真っ直ぐにこちらを見つめ、表情を険しくさせる。
私を見つめているというよりは、やはり桜汰くんの目線は私の髪の毛に集中しているようで、それだけ髪を切ることに葛藤や躊躇があったことが嫌でも窺え、ズキズキと胸が痛む。
無自覚に自分を切り落とし続けていた私を間近で見続けていた桜汰くんは、私の髪にハサミを入れるたび、何を思っていたのだろうか……。