やさしい恋のはじめかた
「その頃から目に見えて髪を短くし始めただろ?」
「……そ、そうだった……?」
「そうだよ。前までもちょこちょこ髪が短くなってたけど、その頃の髪の切り方は、言い方は悪いけど異常だった」
大海が言う〝その頃〟の記憶が曖昧で尋ねると、容赦なく言い放たれてぐっと押し黙ってしまった。
あの頃は本当に〝仕事を頑張った〟という記憶しかないから、いつ頃からこんなふうな髪型になったのかも、正直、思い出せない。
ただ、何かあるたびに桜汰くんに髪を切ってもらっていたことだけは確かで、それは今もその頃も同じだということだけは断言できる。
大海は続ける。
「堂前とも、これはまずい、って話になって、俺らは俺らで、里歩子にはまだ早すぎたんじゃないかって後悔したし、もし里歩子が潰れてしまうようなことになったら、やってみろって背中を押した俺のせいだって気が気じゃなかった。でも里歩子は、そんな俺らの心配を跳ね返して成功させて。いったんは、ほっと胸を撫で下ろしたんだ」
「そんなことが……」
「ああ。ただ、いつまた里歩子に危うい兆候が出はじめるか、こっちにも推測がつかないと思ってな。……どうにかして里歩子を支えたり、一人前に育ててやれないかと考えたとき、自然に出てきたのが〝恋人になる〟って答えだった」
「……じゃあ--」
「違う。誤解しないで聞いてほしい。好きだと思ったから、自然にその答えにたどり着いたんだ。告白するときに言っただろ、あんまり焦らされると心臓がもたない、って」