やさしい恋のはじめかた
「はい、出ました。ありがとうございます」
それでも一応、スタッフの人となにやら話し込んでいる堂前さんにお礼を言ってみる。
距離が離れているので聞こえているとは思えないけれど、言うと言わないのとでは心境的にだいぶ違う。
それから、すっと前を向いて、桜汰くんの姿を目に捉える。
桜汰くんと女性タレントさんは相変わらず和やかに会話を弾ませていたけれど、もう目を逸らす必要はない。
さあ、歩こう。
よちよちでもいい、たった今見つけた光の道筋を真っすぐにたどって。
その姿を見ていてくれる人がいる、笑って送り出してくれる人がいる、見守ってくれる人がいる。
まずは雪乃に報告だろうか。
それとも大海のほうを先にしたほうがいいだろうか。
でも、どちらにしても、私はもう大丈夫、ひとりで歩ける。
ものすごく遠回りをしたし、心配も迷惑もたくさんかけた。
器だってまだ小さいし、これからだって、自分の足下を見つめながらよちよち歩くような不器用な進み方しか、私にはできそうにない。
だけど、これが私なんだからもう仕方がないと腹を括ろう。
そうだな、例えば、髪が肩につくくらいまで伸びたら。
そのときは、今度は私から、あなたに。
ようやく気づいたばかりの、この想いを。
伝えに行こう。