オトナな部長に独占されて!?
立花萌は私の昇進については何とも思わないようだけど、葉月部長と関わることについては不満みたい。
それを聞き流さず心に留め、私は朝会中の葉月部長をじっと見ていた。
司会の第三営業部係長が連絡事項を読み上げ、『最後に部長から何かありますか?』と話を振っていた。
葉月部長が立ち上がる。
第一から第三までの営業部総勢102名の前に立ち、バリトンボイスの聞き心地の良い声で、残業時間短縮についての話しを始めた。
葉月部長の力は皆が認めるところだと思うけど、『若僧のくせに生意気な……』そう思っている社員はまだたくさんいるはず。
多分、葉月部長なら、それに気づいているんじゃないかな。
それでも彼は臆することなく、堂々と皆の前で指示を出す。
31歳、ロンドン支社から来た葉月部長。
その姿に憧れと尊敬の念を抱かずにはいられない。
そして、もう一つの感情も……。
立花萌の『私が先に目を付けた』という言葉はその通り。
半年前の私は、敵意を持って部長を見ていたほどだ。
でも、今は違う。
部長の姿が視界に入れば胸が高鳴り、声をかけられると顔が熱くなる。
『好きになったらダメですからね』と言われても、困ってしまうよ。
自分の気持ちに気づかないようにしてきたけど、もう無理だ。
私……葉月部長が好きみたい。
恋愛経験ゼロだから、好きになった先に何があるのか分からないけど、部長と私が付き合う姿は想像できない。
私が葉月部長と釣り合わないのは、十分に分かっている。
今まで恋に悩む女達を呆れた目で見ていた。
恋愛なんて、馬鹿らしいと思っていた。
知らなかったよ、こんな気持ちがするなんて。
恋って、切ないものなんだね……。