オトナな部長に独占されて!?
「紳一郎?」
“ 紳一郎 ” は、葉月部長の名前。
私には恥ずかしくて口に出来ないその名で呼ばれた葉月部長は、
「和也! 久しぶりだな」
と、返事をしていた。
立ち話を始めた彼らの会話を聞いていると、どうやら大学時代の友人みたい。
「日本に帰って来たってことは、あれか?
暇なのか?」
と言われて、葉月部長は、
「俺は常に忙しいよ」
と、苦笑いして答えている。
黙ってふたりの会話を聞きつつ、私は新発見に驚いていた。
友人の前だと、葉月部長の口調は変わるんだ。
自分のことを『俺』と言うのを初めて聞いた。
敬語ではなく、砕けた話し方なのも初めてかも……。
そっか。会社での顔と、友人の前での顔は違うのか。
あれ? そうすると、私の前で葉月部長が敬語なのは、どう捉えればいいの?
私に向けるのは、会社用の顔ってことで……それってつまり、私には素顔を見せていないということで……。
不安な方向へと考えが向きそうになっていると、葉月部長に声を掛けられた。
「円香さん、こちらは私の友人の斉藤和也さんです」
紹介されたことにハッとして、慌ててハンドバッグの中から名刺入れを取り出し、一枚差し出しながら挨拶をした。