オトナな部長に独占されて!?



「紳一郎?」


“ 紳一郎 ” は、葉月部長の名前。

私には恥ずかしくて口に出来ないその名で呼ばれた葉月部長は、

「和也! 久しぶりだな」

と、返事をしていた。



立ち話を始めた彼らの会話を聞いていると、どうやら大学時代の友人みたい。


「日本に帰って来たってことは、あれか?
暇なのか?」

と言われて、葉月部長は、

「俺は常に忙しいよ」

と、苦笑いして答えている。


黙ってふたりの会話を聞きつつ、私は新発見に驚いていた。


友人の前だと、葉月部長の口調は変わるんだ。

自分のことを『俺』と言うのを初めて聞いた。

敬語ではなく、砕けた話し方なのも初めてかも……。



そっか。会社での顔と、友人の前での顔は違うのか。


あれ? そうすると、私の前で葉月部長が敬語なのは、どう捉えればいいの?

私に向けるのは、会社用の顔ってことで……それってつまり、私には素顔を見せていないということで……。



不安な方向へと考えが向きそうになっていると、葉月部長に声を掛けられた。


「円香さん、こちらは私の友人の斉藤和也さんです」


紹介されたことにハッとして、慌ててハンドバッグの中から名刺入れを取り出し、一枚差し出しながら挨拶をした。


< 137 / 145 >

この作品をシェア

pagetop