オトナな部長に独占されて!?
「分かりました。ふたりの時は名前で呼ぶよう、努力します。
その代わり、一つ条件が」
「条件?」
「はい。葉月部……し、紳一郎さんも、ふたりの時は言葉遣いを変えてください。
さっき、友人の斉藤さんに話していたような素顔で、私にも話してください」
今まで私に対して丁寧すぎるほどの敬語で話していたのに、急に砕けた喋り方にしろと言われたら、きっと葉月部長は困るはず。
恥ずかしいし、照れるよね?
私に『紳一郎さん』と呼ばせるなら、同じ恥ずかしさを味わってもらわないと。
本気で丁寧語をやめて欲しいというよりは、そんな挑戦的な思いで言ったのだけど、やっぱり葉月部長が一枚上手。
戸惑う様子は一切なく、私の目を真っ直ぐに見て、サラリと口調を変えてしまった。
「別に構わないよ。君とは社内で出会ったから、会社用の口調でいたけど、円香が望むならこっちの話し方にしよう。
ただ、砕けた話し方の方を素の俺だと君は思っているようだけど、そうじゃないことは理解して欲しい。
社会人になって10年。丁寧な言葉遣いは日常的で違和感を感じなくなった。
今ではその口調も、自分らしいと感じているほどなんだよ。
昔の友人に関しては、そういう訳にいかないけどね。
つまり、どっちの言葉遣いでも、俺は俺。
今の見解を踏まえて、考えてみて。
さあ、どっちがいい?
『私は円香さんを愛しています』と言われるのと、『俺は円香を愛してる』と言われるのと、君はどっちが好き?」