その愛の終わりに
その場しのぎにしかならないのはわかっているが、どうしても無理だった。
「さっきから頭痛が止まらないの……。申し訳ないけど、今夜は一人で休みたいわ。旦那様にもそうお伝えしてちょうだい」
サイドテーブルに水差しとコップを置かせたあと、美都子は早々に女中を下がらせた。
月のものが来ているときを除いて義直と寝ないのは、今日が初めてだ。
一人になり、手早くネグリジェに着替える。
部屋着は適当にまとめて椅子の上に置いておいた。
ベッドに寝転がり、きつく唇を噛み締める。
「早く、落とし処を見つけなければ……」
このまま義直を避け続けるわけにはいかない。
しかし、もはや彼に抱かれたくないのだ。
肉体関係を持つにあたり、いかに信頼関係が必要か、今回の件でしっかり学習した。
部屋を見渡せば、義直からの贈り物で溢れかえっている。
文字通り身一つで嫁いだ美都子に、彼は様々な物を買い与えた。
そんなふうに義直一色に染まった部屋は、否応なしに美都子の心に傷を作る。
義直をひっぱたいてやりたいような、怒鳴り付けてやりたいような、普段の自分からはかけ離れた凶暴性が、ふとした瞬間に剥き出しになりそうになる。
思考が麻痺していた美都子は、鈍る頭で一つのことを思い出した。
「事の発端は真珠。あの人が贈り物をしたのは誰か、調べればいいんだわ」
そうだ、そうしよう。
ついでに、義直と深い仲である女を洗いざらい調べて、一人一人に挨拶してはどうだろうか?
それは大変いい案だ。
狂った方向に自問自答しながら、美都子は義直の日程を思い出す。
確か、来週にはまた日本を経ってしまう。
なら行動は今週中に起こさねばならない。
そして当たり前だが、屋敷の人間に露見してはならない。
明日、お茶の時間が終わる頃に義直が出掛けるはずだ。
適当に用事をでっち上げ、途中まで車に同乗しよう。
そして人通りのあるところで降り、それから義直を尾行する。
ついでに、万が一尾行が露見した時のための保険も忘れてはならない。
義直が出掛けるにあたりなくてはならないものをくすね、届けるという名目で尾行するのだ。
明日の朝、食事中にでも互いの1日の過ごし方を話すだろう。
その時に聞いた予定に合わせて、行動するしかない。
今はただ、隠された義直の一面をすべて暴きたい。
ただそれだけが、自分の心に平静をもたらす術なのだと、美都子は実感していた。