嘘から始まる運命の恋
 ぎこちなく真由里の口調を真似て、笑って見せた。つられてケイも――あ、カイか――口もとを緩めたが、すぐに真顔になる。

「ちょっと話したいことがあるんだけど、ここはもう出なくちゃいけないし、ふたりでどこかへ行かないか?」

 カイに言われてギクッとする。真由里の話では、この男は妹の体目当てなのだ。ホテルに連れ込まれたら大変だ。

「あ、じゃあ、どこかでなにか飲まない?」

 私の提案にカイが問いで返す。

「飲みたい気分?」

 本当はもうじゅうぶん飲んだけれど、ホテルに連れ込まれないためにも、ここは飲みたいオーラ全開でいかねばっ。

「うん、うん! 飲みたい! すんごい飲みたい気分! 飲みながらステキな演奏の余韻に浸りたいな~」
「ふぅん、腹減ってないの?」
「うん、来る前に食べて来たから」

 だって、別れ話だけして帰るつもりだったんだもん。

 私の言葉に一瞬だけ考えて、カイが言う。

「それなら、この近くにあるバーに行こうか。雰囲気いいし」

 それってカイの知ってるバーってことだよね? それじゃ完全に私のアウェーだわ。いかがわしいお店だったらどうしよう……。
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