嘘から始まる運命の恋
「そ、そこってお客さん、多い?」

 慌てる私に、カイが「んー」と考え込む。

「そうか、話をするなら静かなバーより賑やかな居酒屋の方がいいかな」
「そ、そ、そうしていただけると助かりますっ」

 私の答えが変だったのか(いや、実際、変だったと思うけど)、カイが眉を寄せた。

「真由里?」
「あ、は、はい」
「なんで敬語?」
「あ、や」

 私、慌てすぎだよ! 落ち着け。

「えーっと、演奏があまりにステキだったから、つい、ね」

 そう言って笑ってごまかすと、カイがふっと笑った。

「それはどうも」

 口角を片方だけ引き上げた笑みがなんだかものすごく大人っぽい。ブラックの細身のスーツもよく似合っていて、意外と落ち着いて見える。それは年齢からすれば当然なんだろう。でも、真由里の好みだから、彼はもっと遊び人風だと思ってた。けど、まあ、真由里をナンパするくらいだから、人は見かけによらないんだろうな。
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