嘘から始まる運命の恋
「じゃ、ちょっと待ってて。荷物、取ってくるから」

 カイはそう言って舞台横にある控え室に向かった。しばらくしてダークグレーのケースを背負って出てきた。

「荷物ってそれだけ?」
「そう。俺の大事なアルトサックス。財布とスマホはポケットの中」
「ふーん」
「それじゃ、行こう」

 彼に促されてライブハウスを出た。狭い路地に連れ込まれたら、などと警戒しながら斜めうしろをついて行ったが、彼が案内してくれたのは、大通りに面した小洒落た洋風居酒屋だった。

「ここ?」

 看板を見上げて内心ホッとする私に、カイが問う。

「こういうの、嫌い?」
「ううん、好き」
「ふーん」

 さっきの私と同じ、気のない返事をして、カイが橫引のドアを開けてくれた。

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

 女性店員さんの元気な声が飛んできて、カイが「ふたり」とぼそりと言う。

「カウンター席でよろしいですか?」
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