嘘から始まる運命の恋
 その経験があったから、彼には新しい世界が開けたんだろうな。

 それを伝えると、カイが小さく肩をすくめた。

「そうかもしれない。だけど、恥ずかしいから、この話は高校を出てからは誰にもしてないんだ」
「そうなんだ」

 他人が聞いたら小さなことなのかもしれないけれど、当時のカイにしたら大きな挫折だったはずだ。それを私に話してくれたことがうれしかった。だって、もしかしたら……相手が私じゃなくて真由里だったら……しなかった話だったかもしれないから。

「離れたら見えてくることってあるよね」

 私の言葉にカイがこちらを見た。

「離れたって言っても、真由里に比べたらものすごく短い期間だけどね」

 そう言った彼の低くてやさしい声が胸に染み込んできて、私はつい言っていた。

「マユって呼んで」
「え?」
「真由里じゃなくて、マユって呼んで。大学時代の友達にはそう呼ばれてたから」

 私の言葉にカイは考えるように右手を口もとにあてたが、すぐに私を見た。

「じゃあ、俺のことはケイって呼んで」
「え?」
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